三十三
その明くる日の歌舞伎座で、最後の吃又の幕が開く少し前、舞台の方の拡声機が絶えずいろいろな人の名前を、―――「本所緑町の誰々さあん」、「青山南町の誰々さあん」、―――と呼び立てるのを聞いていた時であった。
「西宮の誰々さあん」、「下関の誰々さあん」などと云うのが飛び出して来て、しまいに「フィリッピンの誰々さあん」と呼ぶので、さすがに歌舞伎座は日本全国どころやない、南洋のお客さんまで集ってるねんなと、感心していると、妙子が俄に、
三十三
その明くる日の歌舞伎座で、最後の吃又の幕が開く少し前、舞台の方の拡声機が絶えずいろいろな人の名前を、―――「本所緑町の誰々さあん」、「青山南町の誰々さあん」、―――と呼び立てるのを聞いていた時であった。
「西宮の誰々さあん」、「下関の誰々さあん」などと云うのが飛び出して来て、しまいに「フィリッピンの誰々さあん」と呼ぶので、さすがに歌舞伎座は日本全国どころやない、南洋のお客さんまで集ってるねんなと、感心していると、妙子が俄に、