尤もその話は破れたよってに、雪子ちゃんには云わんと置いたけど」
―――姉は、その縁談の橋渡しをしてくれた人が、自分達に好意で教えてくれたので、委しくは聞かなかったけれども、近頃こいさんが啓坊とも違う身分の低い青年と懇意にしておられるそうで、その男と妙な噂が立っているのを御存知ですか、勿論風説に過ぎないでしょうがちょっと御注意申しますと云われた、それで、その時の話が破談になったのも、雪子ちゃんには申分ないのだが、こいさんのそう云う噂が祟ったのかと思われる、と、そう云って、私は幸子ちゃんやこいさんを信用しているから、そんなことが何処まで本当か、その青年と云うのがどんな人間か、何も聞きたくはないけれども、実を云うと兄さんも私も、今となってはこいさんが啓坊と結婚してくれることが一番望ましいので、いずれ雪子ちゃんの身が固まったら、何とか先方へ話をして見たいのである、だから今度のお金のことは、いつかも手紙で云ったような訳で、応じるつもりはないのだけれども、こいさんのあの意気込みでは、下手をすると又兄さんと喧嘩になるので、まあよく考えて返事をするから、とでも云って、ここのところは一と先ず穏便に帰って貰うに越したことはないと思い、それを得心させるにはどんな工合に持って廻ったものだろうかと、この間から頭を悩ましていたのであったが、と、さすがにほっとしたように云うのであった。
「ほんに、啓坊と一緒になってくれるのんが一番ええねんわ。