それから昨日、三宮駅から病院へ直行した妙子が、夕方ちょっと戻って来て、一時間程して又出かけたが、その時の話だと、平素あれほど我慢強い、泣き言など洩らしたことのない板倉が、あんな意気地のない声を出して、「痛い痛い」と云い続ける様子は、見ても恐ろしいような気がすると云っていた。
今朝も妙子が病室へ這入って行った時、妹が寝台の側へ寄って、「こいさんが帰って来やはりましたで」と云ったけれども、病人は苦しそうな眼を妙子の方へちらと向けて、ただ「痛い痛い」と云うばかり。
それは痛みを怺えることに渾身の努力を要するので、他に注意を振り向ける余裕がないのであるらしかった。