そのくせ、見たところでは脹れても膿んでもいないので、何処が痛むのか分らないのであるが、疾患部は左脚の膝の辺から爪先までであるらしく、寝返りを打っても、肌にそうっと触っても、大変な疼き方をするものと見え、そんな時には特別の叫び声を挙げる。
雪子は、いったい何が原因でそうなったのか、耳の手術と脚の痛みとどう云う関係があるのかと聞いたが、それは妙子にもよく分っていなかった。
と云うのは、院長がさっぱり説明を与えてくれないばかりでなく、患者が苦しみ出してからは、逃げを打って成るべく寄り付かないようにしているからであったが、看護婦が洩らした言葉やしろうと考で想像すると、手術の時に何か悪性の黴菌が這入って、その毒が脚の方へ循ったものであるらしかった。