しかしそのうちに、今朝早く国から出て来た老父母や嫂などが病室の外の廊下で相談し始めたので、磯貝院長も捨てて措けなくなり、午後になってから某外科病院の院長に来診を乞い、一室に籠って二人で暫く凝議していたが、やがてその外科の院長が辞去したと思うと、今度は又別な外科医が現れて、それも診察後磯貝院長と何かこそこそ話し合って引き揚げてしまった。
看護婦に聞くと、此処の院長が自分の手に負えなくなったので、神戸で一番名声の高い外科医に来て貰ったところ、大腿部から以下を切断しなければならないのだけれども、それも手後れであると云われたので今更慌て出し、第二の外科医を招いたのであるが、その外科医も匙を投げて帰ったのだと云うことであった。
妙子はそれに附け加えて、自分は今朝病人の状態を見、妹から経過を聞いた時に、これは一刻も猶予はならない、院長に気がねなどしている場合でないから、即座に信用ある医師の来診を求めて善処すべきであると思ったけれども、何しろ田舎の年寄たちは気が長いので、徒に額を鳩めてどうしようこうしようと云うばかりで一向決断に至らない。