看護婦に聞くと、此処の院長が自分の手に負えなくなったので、神戸で一番名声の高い外科医に来て貰ったところ、大腿部から以下を切断しなければならないのだけれども、それも手後れであると云われたので今更慌て出し、第二の外科医を招いたのであるが、その外科医も匙を投げて帰ったのだと云うことであった。
妙子はそれに附け加えて、自分は今朝病人の状態を見、妹から経過を聞いた時に、これは一刻も猶予はならない、院長に気がねなどしている場合でないから、即座に信用ある医師の来診を求めて善処すべきであると思ったけれども、何しろ田舎の年寄たちは気が長いので、徒に額を鳩めてどうしようこうしようと云うばかりで一向決断に至らない。
そんな風にして時間を空費することが、取り返しの付かない結果になるのは分っていたけれども、自分は今日がその人達と初対面であるから、あまり出過ぎたことも云えず、云って見ても、へえ、そうでございますかなあと云うだけで、動いてくれないので、歯痒くてならなかった、と云うのであった。