親達、殊に母親は、どうせ助からないものならそんなむごたらしいことをしないで、満足な体で死なしてやりたいと云い、妹は助からない迄も出来るだけの手段を尽してみるのが当然であると云うので、妹の意見の方が正しいことは明瞭であるけれども、それが年寄たちにはなかなか呑み込めない。
尤も妙子は、孰方にしてももう完全に手後れになったに違いないから、自分は既に諦めているとも云っている。
尚又、板倉に附き添っている看護婦と云うのが、何か院長に反感を持っているらしく、ややもすると院長の悪口を云うので、何処まで信を置いてよいか分らないけれども、この院長と云うのは大酒家の上に年のせいもあってアルコール中毒に罹っており、手先が顫えるところから時々手術に失敗があり、今迄にも患者をこんな目に遭わせた例が一二度ある、とのことであった。