で、今度は妙子を呼び出して、啓坊に打つかりはしないであろうか、と云うと、今のところ親兄弟の外には誰も来ていないし、誰にも知らしてないが、たとい容態がどうなるにしろ、奥畑の方へ知らす必要はないであろう、殊に啓坊に来られると、病人を興奮させるような結果にならないとも限らないから、うちが反対して、そんなことはさせないようにする、と云い、それよりも実は、中姉ちゃんに来て貰うように此方から頼もうかと思っていたのである、と云うのは、外科へ渡そうかどうしようかで未だに相談が纏まらないでごたごたしている、うちと妹とは外科医に委ねることを熱心に主張しているのであるが、親たちが煮え切らないので埒が明かない、中姉ちゃんが来て口添えをしてくれると助かるのだけれども、―――と云うのであった。
そんなら御飯を食べて直きに行くから、と、そう云って電話を切った幸子は、雪子と二人でいつもより早い昼食を取りながら、この際看護婦の口から妙子のことなどが世間へ洩れては宜しくないし、もう昨今では殆ど悦子の遊び相手をしているようなもので、何の用事もないのであるから、今日で「水戸ちゃん」に帰って貰ったら、と考えつき、そのことを雪子に相談すると、「水戸ちゃん」自身も、もうお暇を戴きましょうかと云っているのだと云うことなので、そしたら急のようだけれども、今日、あたしが戻る迄いて貰って、晩の御飯でも食べてから帰るように雪子ちゃんから話しといて、と云い置いて、病院まで直行することにして十二時に自動車を命じた。
行って見ると、中山手の電車通を山手の方へ半丁程上った細い坂路の中途にある、病院と云っても二階建ての見すぼらしい医院で、階上に日本間の病室が二つ三つあるに過ぎなかった。