板倉の部屋は六畳間で、窓の外に裏側の家の物干台が近接してい、洗濯物が何枚も吊るしてあるのが鬱陶しく、セルの単衣の頃なので、四五人の人間がそこらに坐ったり腰掛けたりしている風通しの悪い室内が汗臭くいきれていたが、病人は、右手の壁に寄せつけてある鉄の寝台に、壁の方を向いて、背中を少し円くして臥ていた。
幸子は此処へ這入った時から、その病人が、低い、しかし非常な早口で、「痛い痛い痛い痛い」と一秒間の休みもなしに云いつづけているのを聞いたが、それは彼女が妙子の紹介で病人の両親や、嫂や、妹などと挨拶を取り交している間じゅうそうであった。
妙子は紹介が済むと、寝台の枕もとへ両膝を衝いて、