とか云うのであった。
板倉の父親と云う人は、口数の少い、おどおどした眼つきをした老人で、自分の意見などと云うものは持ち合せない淳朴な好々爺のようであるが、母親と云う人は父親よりは大分しっかりしたところがあるらしい。
寝不足なのか、泣いたせいなのか、それとも眼病を患ってでもいるのか、眼瞼が脹れて垂れ下っているために始終眼をつぶっているような顔つきをした、従って表情の鈍い、呆けかかった老婆のような外貌ではあるけれども、さっきから幸子が見ていると、専ら病人の身の周りの世話をしてやっているのはこの母親なのであった。