寝不足なのか、泣いたせいなのか、それとも眼病を患ってでもいるのか、眼瞼が脹れて垂れ下っているために始終眼をつぶっているような顔つきをした、従って表情の鈍い、呆けかかった老婆のような外貌ではあるけれども、さっきから幸子が見ていると、専ら病人の身の周りの世話をしてやっているのはこの母親なのであった。
病人も亦母親に甘えるような風があり、彼女の云うことなら何を云われても黙って聴いていた。
妙子の話だと、病人を外科へ移す相談が停頓しているのは、実際はこの老婆一人が「うん」と云わないからなのだそうであるが、幸子が来てからも、一方では父親と母親、一方では妙子と妹とが二組に分れてときどき部屋の隅の方へ行ったり、外の廊下へ出て行ったりして、こそこそと囁き合い、中に這入って双方を執り成しているらしい嫂が又、彼方へ呼ばれたり此方へ呼ばれたりしていた。