老人夫婦は院長の云うことを唯はいはいと聴いて、それでは宜しくお願い申します、と挨拶して引き退ったのであるが、母親は部屋へ戻って来てから、院長に巧く云いくるめられたのは父親の罪ででもあるかのように口叱言を云っているのであった。
しかし幸子の見た通り、母親にしても悲歎の余りいろいろな愚痴が出るのだけれども、結局外科に引き渡さなければならないことは観念していたものらしく、それを切掛けに折れてしまった。
鈴木病院と云うのは上筒井六丁目の、昔の阪急の終点附近にあったが、漸くそこへ病人を担ぎ出す段取りが付いたのは、暗くなりかかった頃であった。