なぜと云って、その病室の外の廊下は普通の住宅のそれのような三尺幅のものであり、階段も亦狭い上に踊り場がなくて螺旋状に曲っているので、担架で階下へおろす際に、小便をするのにさえあんな喚き方をする病人に非常な苦痛を与えるであろうことは明かだからであった。
親兄弟たちは、病人を気の毒がるよりもその時の鋭い叫び声を聞かされるのが遣り切れないのでヒヤヒヤしたが、何とかして戴けないものでしょうかと、幸子が見かねて看護婦に云うと、いや、その御心配には及びません、注射をして運び出しますから、―――と、そう云う鈴木医師の答だったので、皆ほっとした。
事実病人は注射されてから稍安静になり、医師と、看護婦と、母親に附き添われて運ばれて行った。