事実病人は注射されてから稍安静になり、医師と、看護婦と、母親に附き添われて運ばれて行った。
三十五
父親と、嫂と、妹とが、病室の跡片附けをしたり支払いを済ましたりしている暇に、幸子は妙子を蔭へ呼んで、あたしはこれで帰ろうと思うがこいさんも一往帰ってはどうか、貞之助兄さんも、なるべく私が帰る時にこいさんを連れて帰るように云っているのだが、―――と、誘いをかけて見たのであったが、兎に角手術の結果を見届ける迄は、と云うことなので、幸子は仕方なく、四人を自動車に乗せて鈴木病院へ送り届け、自分はその車で蘆屋へ帰ることにした。