そればかりでなく、病人は、今の一語に徴すると、あの呻く怪物のように見えていた折にも、自分が現在どのような状態にあるのかをちゃんと意識しており、自分の傍でどんな相談が進行しているのかをも、よく知っていた訳なのであった。
何にしても妙子は、病人がもう「痛い痛い」と云わないようになり、前よりずっと楽になったらしいのを見て、ほっとした。
そして、このまま片脚を失っただけで助かるのではないかとも思い、松葉杖を衝いて歩く恢復後の姿を想像したりもしたことであったが、実際は、そのほんの二三時間のあいだだけ、纔かに病人は安静を得ていたのであった。