或る時は黒縮緬の紋附に小紋の石持の綿入を着て、わざと鉄の附いた雪駄をちゃら/\と鳴らしながら穿いて見たり、或る時は粗い黄八丈の対の衣裳に白博多の角帯を締めたり、そう云う場合にはいつも帽子を被らず、長く伸ばして漆のような鬢髪を風に吹かせて、六尺近い偉大な体躯をゆらり/\と運ばせる様子が、いかにも立派で堂々として聊か下品でも滑稽でもなく、往来の人は皆振り顧って驚嘆の目を放ちました。
其頃彼は月に五六度ずつ美顔術師の許に通って、頻りと化粧に浮身を窶し、外出する時は常に水白粉をほんのり着けて、唇に薄紅さえさして居ましたが、もともと容貌が美しかったので、そんな真似をして居ようとは、誰も気が着きませんでした。
「僕はいつ何時でも自分の姿は絵になって居ると信じて居る。