東京を西に距ること数十里の、相州箱根山の頂上に近い、仙石原から乙女峠へ通う山路を少し左へ外れた盆地で、蘆の湖畔に臨んだ風光明媚な一廓の地面を二万坪ばかり買い求めた上、彼は俄かに大土木を起しました。
田を埋め、畑を潰し、林を除き、池を掘り、噴水を作り、丘を築き、日々数百人の人夫を使役して、彼は自分の設計に係る芸術の天国を作り出そうと努力し始めました。
第一に清冽な湖水の水を邸内深く引き込んで、翠緑滴るばかりなる丘と丘との間に漂茫たる入江を湛えさせ、其処にはセイリングやゴンドラや龍頭鷁首や、種々様々の扁舟をさながら美しい港の如く浮べさせます。