彼は此の頃の露西亜の舞踊劇に用いられるレオン、バクストの衣裳を好んで、或は薔薇の精に扮し、或は半羊神に扮し、或はカルナヴァルの男に扮し、しまいには服装を換えるだけでは飽足らずなって、Scheherazade の踊に出て来る土人に変じて体中を真黒に染めたりしました。
十日目の晩には多勢の美男美女を撰りすぐり、羅漢菩薩の姿をさせたり、悪鬼羅刹の装いをさせたり、揚句の果に自分は満身に金箔を塗抹して如来の尊容を現じ、其の儘酒を呷って躍り狂いました。
徹夜の宴に疲れ抜いて、殿堂の廊下や柱や長椅子にしどけなく酔い倒れたまゝ、明くる日の明け方まで何も知らずに睡り通した一同の者は、やがて眼を醒ますと部屋の中央の卓子の上に、金色の儘氷の如く冷めたくなって居る岡村君の死骸を発見したのです。