いや、そればかりではありません、私は結局彼女を説き落して母だの兄だのに会ったのですが、彼等は殆ど自分の娘や妹の貞操と云うことに就いては、問題にしていないのでした。
私が彼等に持ちかけた相談と云うのは、折角当人も学問が好きだと云うし、あんな所に長く奉公させて置くのも惜しい児のように思うから、其方でお差支えがないのなら、どうか私に身柄を預けては下さるまいか。
どうせ私も十分な事は出来まいけれど、女中が一人欲しいと思っていた際でもあるし、まあ台所や拭き掃除の用事ぐらいはして貰って、そのあい間に一と通りの教育はさせて上げますが、と、勿論私の境遇だのまだ独身であることなどをすっかり打ち明けて頼んで見ると、「そうして戴ければ誠に当人も仕合わせでして、………」と云うような、何だか張合いがなさ過ぎるくらいな挨拶でした。