私たちは暫くの間、この珍らしい新居にふさわしいいろいろの家具を買い求め、それらをそれぞれ配置したり飾りつけたりするために、忙しい、しかし楽しい月日を送りました。
私は成るべく彼女の趣味を啓発するように、ちょっとした買物をするのにも自分一人では極めないで、彼女の意見を云わせるようにし、彼女の頭から出る考を出来るだけ採用したものですが、もともと箪笥だの長火鉢だのと云うような、在り来たりの世帯道具は置き所のない家であるだけ、従って選択も自由であり、どうでも自分等の好きなように意匠を施せるのでした。
私たちは印度更紗の安物を見つけて来て、それをナオミが危ッかしい手つきで縫って窓かけに作り、芝口の西洋家具屋から古い籐椅子だのソオファだの、安楽椅子だの、テーブルだのを捜して来てアトリエに並べ、壁にはメリー・ピクフォードを始め、亜米利加の活動女優の写真を二つ三つ吊るしました。