そう、たしかに恋してはいたのでしょうが、自分自身のつもりでは寧ろ彼女を育ててやり、立派な婦人に仕込んでやるのが楽しみなので、ただそれだけでも満足出来るように思っていたのです。
が、その年の夏、会社の方から二週間の休暇が出たので、毎年の例で私は帰省することになり、ナオミを浅草の実家へ預け、大森の家に戸締りをして、さて田舎へ行って見ると、その二週間と云うものが、たまらなく私には単調で、淋しく感ぜられたものです。
あの児が居ないとこんなにもつまらないものか知らん、これが恋愛の初まりなのではないか知らん、と、その時始めて考えました。