それに私は、彼女と始めて泊りがけの旅に出ると云うことが愉快でなりませんでしたから、なるべくならばその印象を美しいものにするために、あまりケチケチした真似はしないで、宿屋なども一流の所へ行きたいと、最初はそんな考でいました。
ところがいよいよと云う日になって、横須賀行の二等室へ乗り込んだ時から、私たちは一種の気後れに襲われたのです。
なぜかと云って、その汽車の中には逗子や鎌倉へ出かける夫人や令嬢が沢山乗り合わしていて、ずらりときらびやかな列を作っていましたので、さてその中に割り込んで見ると、私はとにかく、ナオミの身なりがいかにも見すぼらしく思えたものでした。