私は今でもナオミが極まり悪そうに自分のパラソルを袂の蔭へ隠したことを覚えています。
それもその筈で、そのパラソルは新調のものではありましたが、誰の目にも七八円の安物としか思われないような品でしたから。
で、私たちは三橋にしようか、思い切って海浜ホテルへ泊ろうかなどと、そんな空想を描いていたに拘わらず、その家の前まで行って見ると、先ず門構えの厳めしいのに圧迫されて、長谷の通りを二度も三度も往ったり来たりした末に、とうとう土地では二流か三流の金波楼へ行くことになったのです。
私は今でもナオミが極まり悪そうに自分のパラソルを袂の蔭へ隠したことを覚えています。
それもその筈で、そのパラソルは新調のものではありましたが、誰の目にも七八円の安物としか思われないような品でしたから。
で、私たちは三橋にしようか、思い切って海浜ホテルへ泊ろうかなどと、そんな空想を描いていたに拘わらず、その家の前まで行って見ると、先ず門構えの厳めしいのに圧迫されて、長谷の通りを二度も三度も往ったり来たりした末に、とうとう土地では二流か三流の金波楼へ行くことになったのです。