―――と、そうハッキリと覚えているのは、実はその時分、いやずっとその以前、あの行水を使い出した頃から、私は毎日ナオミに就いていろいろ興味を感じたことを日記に附けて置いたからです。
全くあの頃のナオミは、その体つきが一日々々と女らしく、際立って育って行きましたから、ちょうど赤子を産んだ親が「始めて笑う」とか「始めて口をきく」とか云う風に、その子供の生い立のさまを書き留めて置くのと同じような心持で、私は一々自分の注意を惹いた事柄を日記に誌したのでした。
私は今でもときどきそれを繰って見ることがありますが、大正某年九月二十一日―――即ちナオミが十五歳の秋、―――の条にはこう書いてあります。