嬢がどれほどナオミを愛していたかと云うことは、驚いたことに、嬢の部屋へ通って見ると、その化粧台の鏡の周りにナオミの写真が沢山飾ってあったのでも分るのでした。
私は内心嬢の意見や教授法に対しては甚だ不満でしたけれども、同時に又、西洋人がナオミをそんなにひいきにしてくれる、賢い児だと云ってくれるのが、自分の思う壺なので、あたかも自分が褒められたような嬉しさを禁じ得ませんでした。
のみならず、元来私は、―――いや、私ばかりではありません、日本人は誰でも大概そうですが、―――西洋人の前へ出ると頗る意気地がなくなって、ハッキリ自分の考を述べる勇気がない方でしたから、嬢の奇妙なアクセントのある日本語で、しかも堂々とまくし立てられると、結局此方の云うべきことも云わないでしまいました。