まだ日の長い暑い時分のことだったので、すっかり障子を明け放してある西側の窓から、夕日がぎらぎらとさし込んでいる、そのほの紅い光を背に浴びせながら、白いジョオゼットの上衣を着て、紺のサージのスカアトを穿いて、部屋と部屋との間仕切りの所に立っているのが、云うまでもなくシュレムスカヤ夫人でした。
二人の子供があるというのから察すれば、実際の歳は三十五六にもなるのでしょうか?
見たところでは漸く三十前後ぐらいで、成る程貴族の生れらしい威厳を含んだ、きりりと引き緊まった顔だちの婦人、―――その威厳は、多少の凄みを覚えさせるほど蒼白を帯びた、澄んだ血色のせいであろうと思われましたが、しかし凛乎たる表情や、瀟洒な服装や、胸だの指だのに輝いている宝石を見ると、これが生活に困っている人とはどうしても受け取れませんでした。