―――でも考えるとお気の毒な方でございますわ、もとは伯爵の奥様で、何不自由なくお暮らしになっていらしったのが、革命のためにこう云う事までなさるようになったのですから。
待合室になっている次の間のソオファに腰かけて、稽古場の有様を見物しながら、二人の婦人がさも感心したようにこんな事をしゃべっています。
一人の方は二十五六の、唇の薄く大きい、支那金魚の感じがする円顔の出眼の婦人で、髪の毛を割らずに、額の生え際から頭の頂辺へはりねずみの臀部の如く次第に高く膨らがして、髱の所へ非常に大きな白鼈甲の簪を挿して、埃及模様の塩瀬の丸帯に翡翠の帯留めをしているのですが、シュレムスカヤ夫人の境遇に同情を寄せ、しきりに彼女を褒めちぎっているのはこの婦人の方なのでした。