それのみならず夫人の体には一種の甘い匂がありました。
「あの女アひでえ腋臭だ、とてもくせえや!
と、例のマンドリン倶楽部の学生たちがそんな悪口を云っているのを、私は後で聞いたことがありますし、西洋人には腋臭が多いそうですから、夫人も多分そうだったに違いなく、それを消すために始終注意して香水をつけていたのでしょうが、しかし私にはその香水と腋臭との交った、甘酸ッぱいようなほのかな匂が、決して厭でなかったばかりか、常に云い知れぬ蠱惑でした。
それのみならず夫人の体には一種の甘い匂がありました。
「あの女アひでえ腋臭だ、とてもくせえや!
と、例のマンドリン倶楽部の学生たちがそんな悪口を云っているのを、私は後で聞いたことがありますし、西洋人には腋臭が多いそうですから、夫人も多分そうだったに違いなく、それを消すために始終注意して香水をつけていたのでしょうが、しかし私にはその香水と腋臭との交った、甘酸ッぱいようなほのかな匂が、決して厭でなかったばかりか、常に云い知れぬ蠱惑でした。