ナオミは懐から紙を出して、自分では拭かずに、それを私の手の中へ握らせましたが、瞳はじーッと私の方へ注がれたまま、今拭いて貰うその前に、一層涙を滾々と睫毛の縁まで溢れさせているのでした。
ああ何と云う潤いを持った、綺麗な眼だろう。
この美しい涙の玉をそうッとこのまま結晶させて、取って置く訳には行かないものかと思いながら、私は最初に彼女の頬を拭いてやり、その円々と盛り上った涙の玉に触れないように眼窩の周りを拭うてやると、皮がたるんだり引っ張れたりする度毎に、玉はいろいろな形に揉まれて、凸面レンズのようになったり、凹面レンズのようになったり、しまいにははらはらと崩れて折角拭いた頬の上に再び光の糸を曳きながら流れて行きます。