その明くる日、ナオミは私から二百円貰って、一人で三越へ行き、私は会社で午の休みに、母親へ宛てて始めて無心状を書いたものです。
「………何分この頃は物価高く、二三年前とは驚くほどの相違にて、さしたる贅沢を致さざるにも不拘、月々の経費に追われ、都会生活もなかなか容易に無之、………」
と、そう書いたのを覚えていますが、親に向ってこんな上手な嘘を云うほど、それほど自分が大胆になってしまったかと思うと、私は我ながら恐ろしい気がしました。
その明くる日、ナオミは私から二百円貰って、一人で三越へ行き、私は会社で午の休みに、母親へ宛てて始めて無心状を書いたものです。
「………何分この頃は物価高く、二三年前とは驚くほどの相違にて、さしたる贅沢を致さざるにも不拘、月々の経費に追われ、都会生活もなかなか容易に無之、………」
と、そう書いたのを覚えていますが、親に向ってこんな上手な嘘を云うほど、それほど自分が大胆になってしまったかと思うと、私は我ながら恐ろしい気がしました。