己はあの頃のナオミに惚れたので、それの惰勢が今日まで続いて来たのだけれど、考えて見れば知らない間に、この女は随分たまらないイヤな奴になっているのだ。
あの「悧巧な女は私でござい」と云わんばかりに、チンと済まして腰かけている恰好はどうだ、「天下の美人は私です」というような、「私ほどハイカラな、西洋人臭い女は居なかろう」と云いたげな、あの傲然とした面つきはどうだ。
あれで英語の「え」の字もしゃべれず、パッシヴ・ヴォイスとアクティヴ・ヴォイスの区別さえも分らないとは、誰も知るまいが己だけはちゃんと知っているのだ。