しかし読者よ、これで私がすっかりナオミに飽きが来たのだと、推測されては困るのです。
いや、私自身も今までこんな覚えはないので、一時はそうかと思ったくらいでしたけれど、さて大森の家へ帰って、二人きりになって見ると、電車の中のあの「満腹」の心は次第に何処かへすッ飛んでしまって、再びナオミのあらゆる部分が、眼でも鼻でも手でも足でも、蠱惑に充ちて来るようになり、そしてそれらの一つ一つが、私に取って味わい尽せぬ無上の物になるのでした。
私はその後、始終ナオミとダンスに行くようになりましたが、その度毎に彼女の欠点が鼻につくので、帰り途にはきっと厭な気持になる。