ところが或る日―――まだ梅雨が明けきれない頃で、鬱陶しい晩のことでしたが、同僚の一人の波川と云う技師が、今度会社から洋行を命ぜられ、その送別会が築地の精養軒で催されたことがありました。
私は例に依って義理一遍に出席したに過ぎませんから、会食が済み、デザート・コースの挨拶が終り、みんながぞろぞろ食堂から喫煙室へ流れ込んで、食後のリキウルを飲みながらガヤガヤ雑談をし始めた時分、もう帰っても好かろうと思って立ち上ると、
「おい、河合君、まあかけ給え」
ところが或る日―――まだ梅雨が明けきれない頃で、鬱陶しい晩のことでしたが、同僚の一人の波川と云う技師が、今度会社から洋行を命ぜられ、その送別会が築地の精養軒で催されたことがありました。
私は例に依って義理一遍に出席したに過ぎませんから、会食が済み、デザート・コースの挨拶が終り、みんながぞろぞろ食堂から喫煙室へ流れ込んで、食後のリキウルを飲みながらガヤガヤ雑談をし始めた時分、もう帰っても好かろうと思って立ち上ると、
「おい、河合君、まあかけ給え」