そして一日口をきかないようなことも屡〻でしたが、それが最後に爆発したのは、ちょうど鎌倉を引き払ってから二箇月の後、十一月の初旬のことで、ナオミが未だに熊谷と関係を断っていないと云う動かぬ証拠を、私が発見した時でした。
これを発見するまでのいきさつに就いては、別段ここにそう委しく書く必要がありません。
私は疾うから、引っ越しの準備に頭を使っている一方、直覚的にナオミを怪しいと睨んでいたので、例の探偵的行動を少しも緩めずにいた結果、或る日彼女と熊谷とが、大胆にもつい大森の家の近所の曙楼で密会した帰りを、とうとう抑えてしまったのです。