それも予め電話をかけて、コッソリ訪ねて来てくれるんならよかったんだが、荷物を積んで、自動車を飛ばして、いきなり玄関に乗り着けたんで、家じゅうの者が一体あれは何者だと云う騒ぎになったもんだから、『まあお上り』とも云う訳に行かず、さすがの熊谷も弱っちゃったと云っていました」
「ふうん、それから?
「それで仕方がないもんだから、荷物だけを熊谷の部屋に隠して、二人でともかくも戸外へ出て、それから何でも怪しげな旅館へ行ったと云うんですが、しかもその旅館が、この大森のお宅の近所の何とか楼とか云う家で、その日の朝もそこで出会ってあなたに見付かった場所だと云うから、実に大胆じゃありませんか」