私は幾度も考えて見ましたが、今夜のナオミは、あの汚らわしい淫婦のナオミ、多くの男にヒドイ仇名を附けられている売春婦にも等しいナオミとは、全く両立し難いところの、そして私のような男はただその前に跪き、崇拝するより以上のことは出来ないところの、貴い憧れの的でした。
もしも彼女の、あの真白な指の先がちょっとでも私に触れたとしたら、私はそれを喜ぶどころか寧ろ戦慄するでしょう。
この心持は何に譬えたら読者に了解して貰えるか、―――まあ云って見れば、田舎の親父が東京へ出て、或る日偶然、幼い折に家出をした自分の娘と往来で遇う。