私はその時分、彼女をつくづく天稟の淫婦であると感じたことがありましたが、それはどう云う点かと云うと、彼女はもともと多情な性質で、多くの男に肌を見せるのを屁とも思わない女でありながら、それだけ又、平素は非常にその肌を秘密にすることを知っていて、たとい僅かな部分をでも、決して無意味に男の眼には触れさせないようにしていたことです。
誰にでも許す肌であるものを、不断は秘し隠しに隠そうとする、―――これは私に云わせると、確かに淫婦が本能的に自己を保護する心理なのです。
なぜなら淫婦の肌と云うものは、彼女に取って何より大切な「売り物」であり、「商品」であるから、場合に依っては貞女が肌を守るよりも、一層厳重にそれを守らねばならない訳で、そうしなければ、「売り物」の値打ちはだんだん下落してしまいます。