なぜかと云うと、いくら私が交際嫌いであるからと云って、六十何年の間には相当に知人が殖えており、若い時代に比べれば、既に現在でも交際の範囲が非常に廣くなっているのである。
若い時代には一人でも多くの人を知り、少しでも多くの世間を覗く必要があるかも知れないが、私の場合は、この先何年生きられるものかも分らないし、大体生きている間にして置こうと思う仕事は、ほゞ豫定が出来ているのである。
その仕事の量を考えると、なか/\生きている間には片付きそうもないくらいあるので、私としては自分の餘生を傾けて、それをぽつ/\豫定表に従って片端から成し遂げて行くことが精一杯で、もうこれ以上人を知ったり世間を覗いたりする必要は殆どない。