ほんの五分か三分でよいからお目に懸りたい、などと云って来る人があるが、その三分か五分のために折角の感興が中断されると、再び書斎に戻って行っても直ぐには油が乗って来ないので、三十分や四十分は忽ち空に消えてしまい、どうかすればそれきり書けないでしまうことがあるから、邪魔される分には時間の長い短いは大して関係がないのである。
そこで、昨今の私は出来るだけ交際の範囲をちゞめ、せめてその範囲を現在以上に廣げないようにし、新しい知人をなるべく作らないようにしている。
昔は交際嫌いと云っても美人だけは例外で、美しい人に紹介されたり訪ねて来られたりすることは、この限りではなかったのであるが、今はそれさえもあまり有難いとは思わない。