訪客を断るにはいろ/\の手があるが、最も普通に用いられるのは居留守を使うことであろう。
取次に出る女子供に取っては、面倒な言訳をするより「只今主人は留守です」と云ってしまうのが一番簡単だからであろうが、私はこの手を用いるのが嫌いなので、家の者を警めて、「主人は在宅しておりますけれども、紹介状を持たない方にはお目に懸らないことにしております」という意味を、せい/″\慇懃な言葉を以て、客に徹底させるようにしている。
それは何よりも、客のためにウソを吐くことが癪だからであるが、―――狭い家だとウソを吐いたために便所へも行けず、シャックリやクシャミも出来ないのである。