たとへば私が大朝と大毎の夕刊を買つて乘り込むとすると、孰方か一つ、私の手に取らない方の新聞を、ちやんと眼をつけて直ぐ借りに來る。
而も遠くから、人ごみを分けてやつて來て、煙草の火でも借りるやうな風で、「ちよいと拜借」と、譯なく借りて持つて行つてしまふ。
さうして雜沓の中であるから、もうその人は何處へ行つたか姿が見えず、貸したが最後向うから返しに來てくれる迄ポカンと待つより仕方がない。
たとへば私が大朝と大毎の夕刊を買つて乘り込むとすると、孰方か一つ、私の手に取らない方の新聞を、ちやんと眼をつけて直ぐ借りに來る。
而も遠くから、人ごみを分けてやつて來て、煙草の火でも借りるやうな風で、「ちよいと拜借」と、譯なく借りて持つて行つてしまふ。
さうして雜沓の中であるから、もうその人は何處へ行つたか姿が見えず、貸したが最後向うから返しに來てくれる迄ポカンと待つより仕方がない。