しかし此れなどは非常識でも愛矯のある部だが、これも矢張り同じ風呂場で、或る朝私が湯槽の縁にしやがみながら、湯を浴びてゐると、中に漬つてゐる二人連れの男が、つい鼻の先で、此方を無遠慮にヂロヂロ見つめては話をしてゐる。
「ホレ、此の方が谷崎さんや」「ふーん、さうだつか、此れが谷崎さんだつか、偉いお方やな」と、まるで品物の値蹈みでもするやうに、人の顏を見ては感心してゐる。
そのくらゐなら「あなたは谷崎さんですか」と呼びかけてくれる方がまだいいのだが、決して直接には話しかけない。
しかし此れなどは非常識でも愛矯のある部だが、これも矢張り同じ風呂場で、或る朝私が湯槽の縁にしやがみながら、湯を浴びてゐると、中に漬つてゐる二人連れの男が、つい鼻の先で、此方を無遠慮にヂロヂロ見つめては話をしてゐる。
「ホレ、此の方が谷崎さんや」「ふーん、さうだつか、此れが谷崎さんだつか、偉いお方やな」と、まるで品物の値蹈みでもするやうに、人の顏を見ては感心してゐる。
そのくらゐなら「あなたは谷崎さんですか」と呼びかけてくれる方がまだいいのだが、決して直接には話しかけない。