初めのうちは「天ぷら………天ぷら………」と、「天ぷら」の部分ばかりが明瞭であったが、少しずつ近づいて来るのであろう、やがて「喰いたい」の部分の方も正しく聞き取れるようになった。
しかし、地上には私と松の影より外に、新内語りらしい人影は何処にも見えない。
月の光のとどく限りを、果から果までずっと眺め渡しても、私の外にこの街道を行く者は小犬一匹いないのである。
初めのうちは「天ぷら………天ぷら………」と、「天ぷら」の部分ばかりが明瞭であったが、少しずつ近づいて来るのであろう、やがて「喰いたい」の部分の方も正しく聞き取れるようになった。
しかし、地上には私と松の影より外に、新内語りらしい人影は何処にも見えない。
月の光のとどく限りを、果から果までずっと眺め渡しても、私の外にこの街道を行く者は小犬一匹いないのである。