大貫は号を晶川と云ひ、本名を雪之助と云つたが、玉川在二子村の生れで、色の真黒な、手に白なまづのある、田舎者丸出しの風采だつたから、「大貫は雪之助ではない、雲之助だよ」と、辰野はそんな悪口を云つた。
私なども満面にニキビが出来てゐたので、「谷崎は近頃ニキビ並びがよくなつたね」なんかと云はれた。
が、何はともあれ、当時の私共、―――明治の末年に於ける文学青年や新進作家の生活振りは、今とは自ら様子の変つたところもあつて、想ひ出してみると中々面白い。
大貫は号を晶川と云ひ、本名を雪之助と云つたが、玉川在二子村の生れで、色の真黒な、手に白なまづのある、田舎者丸出しの風采だつたから、「大貫は雪之助ではない、雲之助だよ」と、辰野はそんな悪口を云つた。
私なども満面にニキビが出来てゐたので、「谷崎は近頃ニキビ並びがよくなつたね」なんかと云はれた。
が、何はともあれ、当時の私共、―――明治の末年に於ける文学青年や新進作家の生活振りは、今とは自ら様子の変つたところもあつて、想ひ出してみると中々面白い。