(箱根の事件は、その時萬龍と一緒にゐた何とか云ふ雛妓の話を基にして、小山内氏が短篇小説にした筈である。
「梅龍の話」とか云ふ題であつたと記憶するが、あれを読むと、光景が眼に浮かぶやうに書いてある)そして、恒川が彼の結婚問題を私に打ち明けるやうになつたのは、彼女を落籍させるための金策に困つて、その相談を私の所へ持ち込んで来たからであつた。
恐らくそんな事情でもなければ、彼がわざ/\その時分の私を訪ねることはなかつたであらうが、いくら疎遠になつたと云つても、そこは矢張旧友の情誼を信頼してゐてくれたのであらう。