だから両親は私の金策が不成功に終つたことを喜んでゐたらしく、寧ろ恒川が意を飜すやうに極力忠告をしてくれろと云ふ始末で、特に母堂は、「谷崎さん、もしこんな事が新聞にでも出たら大変ですから、どうか必ず秘密にしておいて下さいよ」と、くれ/″\も念を押された。
しかし私には、此の人の好い、気の弱い両親が、もうすつかり恒川に足元を見られてゐるので、結局彼の望み通りに引き擦られてしまふことが、分り切つてゐるやうに思へた。
そして女中に案内をされて風間氏邸へ行つてみると、そこには恒川と、萬龍夫人と、彼等の熱心な同情者である令弟呉作君がゐて、頗る花やかな空気であつた。