後に生田葵山君から聞くところに依れば、「谷崎の書いたものを是非読んで見ろ」と云つて先生に推薦した者は、葵山君であつたと云ふ。
然らば先生が読まれたのは恐らくあの時よりも後であつて、私は生田葵山君にも大いに感謝しなければならない。
永井氏の前に、近松秋江氏も新聞の月評欄で私の「少年」を褒めて下すつたことがあるけれども、しかしその称讃の程度と云ひ、形式と云ひ、分量と云ひ、既に大家の域にある作家が後輩を推挙するものとして、永井氏の論文の如く花々しいものは前例のないことであるから、予想の如く、そのお蔭で私は一と息に文壇へ押し出てしまつた。