「パンの会」の方は洋食屋の二階で、大部分が粗暴な青年共であつたから、野蛮を極めたものであつたのに、今日のは一流の旗亭に於ける純日本式の盛宴であり、白襟の婦人連がお膳の前に行儀よく控へてゐるのだから、何となく堅苦しい。
私は借り着の紋附き袴で、それでなくても自然鯱硬張つてゐたところへ、その日瀧田君が私を連れ出したと云ふのが、当時問題の人物であつた私と云ふものを文壇に紹介する一方、附き合ひの狭い私を世間へ出してやらうと云ふ好意があつたことゝ思はれるので、それが私の意識に反映して、一層固くならざるを得なかつた。
私は大広間にずらりと居流れた人々を見渡したけれども、殆ど一人も知つた顔はなかつた。