それでも私は誰に話をしかけるでもなく、所在なさゝうにチビリチビリやつては膳のものを摘まんでゐると、さつきから私の右隣りにゐて矢張気まづさうに黙り込んでゐた紳士が、物柔らかに会釈しながら名刺を私の前に置いた。
見るとそれは中村吉蔵君であつた。
私は名刺を戴いて懐に入れると、自分の名刺を中村君に呈したが、その名刺と云ふのが、漉きつ放しの日本紙へペン字の自署を石版刷りにした、悪く気取つたものだつた。
それでも私は誰に話をしかけるでもなく、所在なさゝうにチビリチビリやつては膳のものを摘まんでゐると、さつきから私の右隣りにゐて矢張気まづさうに黙り込んでゐた紳士が、物柔らかに会釈しながら名刺を私の前に置いた。
見るとそれは中村吉蔵君であつた。
私は名刺を戴いて懐に入れると、自分の名刺を中村君に呈したが、その名刺と云ふのが、漉きつ放しの日本紙へペン字の自署を石版刷りにした、悪く気取つたものだつた。