もと/\何の根拠もない一時的の反感なのだから、放つて置けば自然に消滅する、なまじ御機嫌を取りに行つたり云ひ訳したりしない方がいゝと云ふ風に、たかを括つてゐた。
然るにそれが又氏の癇癪に触れたと見えて、氏の蔭口はます/\悪辣になり、方々から私の耳へ這入つた。
当時私は中央公論のために「悪魔」を執筆中であつたが、火のつくやうに金が欲しかつた時代なので、五枚十枚ぐらゐづゝ書けるに随つて瀧田氏の許へ原稿を送り、その都度引き換へに五枚分十枚分の稿料を貰つてゐた。
もと/\何の根拠もない一時的の反感なのだから、放つて置けば自然に消滅する、なまじ御機嫌を取りに行つたり云ひ訳したりしない方がいゝと云ふ風に、たかを括つてゐた。
然るにそれが又氏の癇癪に触れたと見えて、氏の蔭口はます/\悪辣になり、方々から私の耳へ這入つた。
当時私は中央公論のために「悪魔」を執筆中であつたが、火のつくやうに金が欲しかつた時代なので、五枚十枚ぐらゐづゝ書けるに随つて瀧田氏の許へ原稿を送り、その都度引き換へに五枚分十枚分の稿料を貰つてゐた。